インタビューVol.4整形外科チーム

若い力を結集させた整形外科チームが困難な症例に立つ向かう

「小滝橋動物病院グループ」は東京都内に10か所の診療拠点を構える、獣医師のプロ集団です。地域の飼い主からの信頼だけでなく、一次診療の医療施設から、セカンドオピニオンを依頼されたり、手術のための紹介も少なくありません。

第4回は若くエネルギッシュな整形外科チームにお話を伺いました。

小滝橋動物病院グループの整形外科が、意識の高い飼い主に選ばれる理由

整形外科チームを牽引するのはグループ副代表の磯野新獣医師。大学院に通いながら、現在は動物医療センター元麻布で院長として診療を行いつつ、グループ全体の整形外科手術を行っています。

磯野獣医師)「他の診療科との連携ができること。それがグループの魅力です。整形外科ではCTやMRIが診断のために必要になることもありますが、画像チームがすぐに対応してくれます。整形外科の手術後にはリハビリチームが構えてくれているので、最初から最後まで責任を持ってみることができます。また、整形外科疾患のように見えて神経疾患のケースも少なく有りません。その際には神経科と連携し、診断・治療を実施することが可能です。」

「新目白通り第2高度医療センター」を拠点に、整形外科の診断、手術を行うのは多喜翔平獣医師です。

多喜獣医師)「最近は意識の高い飼い主さんが多く、多少治療費がかかっても適切な治療を受ける方が増えています。たとえば小型犬に多い膝蓋骨脱臼は放っておくことで高齢になったときに症状が悪化したり、他の疾患を併発するケースがあります。現在症状がない子でも、将来的に症状が悪化しないために若いうちに手術するという飼い主さんも増えてきています。

最近ではCT画像とともに3Dプリンターで作成した骨模型をお見せすることで、骨のねじれや細い骨の状態まで理解しやすくなり、手術が必要な意味を理解してもらえています。さらに、3Dプリンター骨模型を利用して疑似手術を実施することが可能なため、手術精度をさらに上げることが可能となりました。」

整形外科チーム最年少の初山太基獣医師は、過去に2年間一次診療の動物病院で働いた経験を持ちます。

初山獣医師)「一次診療の動物病院では、整形外科などの特殊な手術ができない場合もあります。私が勤務していた動物病院でも、骨折に包帯を巻く治療を主に実施していましたが、変形したり癒合しにくいケースがあり、歩くまでの時間も長かったです。手術でプレートなどによる固定を行うことですぐに歩くことができるようになりほとんど癒合不全なども起きないということに驚きました。

今のグループには難しい症例を診断する検査機器、最高難度の手術に対応できる設備がある。獣医師誰もが諦めない姿勢で仕事をしています。」

高度な治療を可能にする、最新の機器が実装されている

整形外科チームにとって、非常に有効な機器として「Cアーム」の存在を3人の獣医師がそろってあげてくれました。透視と呼ばれる、リアルタイムのレントゲン写真を動画のように映し出せる機器です。通常のレントゲンは真上からしか撮影できませんが、Cアームは360度どの角度からも撮影が可能であり、術中にあらゆる角度から確認することができます。

多喜獣医師)「術中の骨の状態や、金属プレートやネジの状態や、0.1ミリ単位で測定が必要なケースでもCアームが役立ちます。直径2~3ミリの骨に0.8ミリのドリルを入れるような手術もありますから、Cアームの存在は大きいですね。」

チーム内の連携は各自の向上心から生まれる

手術中は執刀医以外のスタッフとの連携が、手術の進行に大きく関わるそうです。

多喜獣医師)「Cアームの操作ひとつとっても、執刀医との阿吽の呼吸が大切です。どこをどの角度で映してほしいのか、指示を出さなくてもわかってくれると手術の進行がスムーズになります。」

磯野獣医師)「整形外科で使用するプレート、ネジ、器具などは、種類が非常に多く、覚えるのが大変ですが、動物看護師も含め、全員がよく勉強していて知識の積み重ねに驚かされるほどです。」

整形外科の看護師である岩崎愛女さんは自身の夢も含めて話します。

岩崎看護師)「2年後にはグループの総合病院がスタートする予定です。そこの整形外科チームに配属されるのが直近の夢です。今よりさらに難しい手術にも対応できないといけませんから、病気や治療に関する勉強をしたり、手術の動画を繰り返し見て、自分に必要なスキルを向上させています。」

一日も早い回復を願って、動物への負担が少ないリハビリを実践

整形外科チームには、主にリハビリを担当する動物看護師もいます。矢ヶ﨑望さんもその一人。

矢ヶ﨑看護師)「グループ内で行った手術後機能の回復促進をリハビリチームが行っています。リハビリ専門外来の先生が週に一度来られてリハビリ計画が立てられます。手を使う徒手療法、またぐ、くぐるなどの陸上療法、水中トレッドミルを使用した水中療法に加え、レーザーや赤外線治療も行います。動物の心身に負担をかけず、できるだけ早い回復が望めるように工夫をしています。

また、自宅で飼い主さんと動物が、楽しく遊びながら実践できるリハビリも考案し、伝えていくようにしています。」

東京一の整形外科病院を目指す

初山獣医師)「同年代の獣医師の中では、圧倒的に手術に入った件数は多いと自負しています。若い力を信じて挑戦させてくれるグループの考え方は素晴らしいと感じています。現在、磯野獣医師、多喜獣医師が執刀している手術の多くを私が担えるようになれば、お二人にはさらに難しい手術に入ってもらえる。それを目標に日々、精進しています。」

多喜獣医師)「おそらく都内で最も若い整形外科チームだと思います。だからといって、他院に劣っているわけではなく、他でできることはうちでも必ずできますし、技術を磨くことも、知識を深めることにおいても妥協はしていません。東京一の整形外科チームを目指しています。」

整形外科的な不安をもつ飼い主へのメッセージ

岩崎看護師)「動物のことは飼い主さまがいちばんよく見ているものです。だからこそ気づく些細なことがあると思います。何かに気づいたら、どんなに小さなことでもいいので電話をください。歩きづらそう、痛がっている、いつもと違う様子など、遠慮はいりません。」

矢ヶ﨑看護師)「動物種によってかかりやすい病気や遺伝的なものもあります。看護師はそれらを理解しています。リハビリが必要になったときにはそうした知識を前提に、ご家族である動物たちが、少しでも早く回復できるようにお手伝いさせていただきます。」

初山獣医師)「動物が若い頃には、成長板と呼ばれる成長にかかわる組織に異常が起こることがあります。高いところから飛び降りたとか、どこかにぶつけたときに限らず、足を挙げる、痛がるなどの普段とは異なる変化があったときには、すぐに連絡をください。放っておくとその部位が成熟できないケースもありますが、若いうちに手術をすれば問題なく成長できる可能性が高くなります。」

多喜獣医師)「私たちのグループの診療施設には、『高度医療』や『センター』といった仰々しい名前がついていたり、ガラス張りの外観から大きな機器が見えていたりします。そのせいで敷居を高く感じてしまう飼い主さんもいらっしゃるようですが、決して高度医療のためだけの病院ではありません。一般的な診察や治療も真摯に行っています。他院で手術が必要と言われて私たちのところに来られて、しっかり診察をすると手術は不要、内服だけで完治できるケースも少なくありません。」

磯野獣医師)「他院で治療不可と言われても、私たちのチームで治せる例もあります。多くの難治性の病気や症例を見てきた私たちだからこそ、適切な治療ができると自負しています。原因がわからない、治らないといわれたとしても、諦めずに相談してください。チーム一丸となって診療していきます。」

もしものための高度専門医療
もしものためのペット専門医療中村 泰治-Nakamura Yasuharu-

飼い主のペットに対する健康志向が高まるにつれて、動物医療に対して求められることは多様化し、専門的な知識が必要とされてきています。
内科、外科、耳鼻科、眼科……と細かく診療科が分かれている人間の病院に対し、動物病院は多くの場合、1人の医師が全身すべての病気を診る「1人総合病院」状態が一般的でした。
しかし、そこから脱却し、高度医療を担う施設や専門分野に特化した病院の増加、施設間で連携し紹介しあう体制づくりなど、人間のような医療体制が求められています。
動物にも高度で専門的な知識を提供できれば、今まで救えなかった命を救うことができるからです。
本書では、グループ病院全体で年間3000件を超える手術を行うなど、動物の高度医療を目指す獣医師が、診断や治療の最前線を紹介し、ペットの「こんなとき、どうする?」という悩みにも、症状別に分かりやすく解説しています。